「ハネムーン・キラーズ」
デイブ・マタックスがレコードコレクターズ誌の20世紀のベスト・ドラマー100の38位に入っているのはうれしい限り。和久井光司という人が書いている説明も短い中にうまくまとめています。フェアポート・コンベンションの「リージ・アンド・リーフ」と「フル・ハウス」でトラッドのロックを推進するのを支え、「マッチョ系ドラマーにはないビートの鋭さ、小気味よさがある」とのこと。なにしろ、ひ弱な秀才タイプの風貌ですから。ポール・マッカートニーの「タッグ・オブ・ウォー」と「パイプス・オブ・ピース」に参加しているということなので、記念に買っちゃおうかなあ。推薦盤として挙げているのはフェアポートの「リージ・アンド・リーフ」で、納得(Fairport Convention "Liege and Lief")。
昨日は、アメリカのクライテリオンから2003年に発売されたDVD「ハネムーン・キラーズ」 (The Honeymoon Killers) を見ました。2000年に日本で公開されたらしいです。もともとは1970年にアメリカで公開された映画なんですが、その後、一部の熱狂的なファンを持つ、いわゆるカルトムービーになりました。4月23日にここに書いたように、情欲殺人スリラーです。ただし、そのとき飾った写真ほどエログロではない。主人公の女性が太っている以外は、案外まともなスリラーでした。というよりも殺される女性各々の描写も含めて、残酷なユーモア作品と言っていいかもしれません。
白黒映画で、カメラが自由に動き、照明がいい加減で、野外撮影だと背景が真っ白になったり、やたらテンポが速い箇所があったり、撮り直しのできない低予算のためにドキュメンタリーぽくなったり、マーラーの音楽の大げさな使い方がオフビートな感じだったりで、まるでヌーベルバーグ作品を見ているようでした。主演の女性がステファーヌ・オードランだったら、4月23日のリストの前後にあるシャブロル作品と間違えるかもしれない。カメラの動きや照明の感じはゴダール作品のラウール・クタールみたい。しかも、トリュフォーが大好きな作品だそうです。
これは実話であるという字幕が最初に出てきます。40年代後期に全米を震撼させた「ロンリー・ハーツ・クラブ殺人」事件がもとです。婚活クラブ(ロンリー・ハーツ・クラブ)で知り合った二人が共謀して、小金を持つ寂しい熟年女性に結婚詐欺を働き、次々と殺していきます。たぶん5名ほどが犠牲になったでしょう。まあまあのイケメン、トニー・ロー・ビアンコが女性をだます男で、太ったシャーリー・ストーラーが彼の妹と称して、新婚旅行に同伴します。もし男性の単独犯なら、チャップリンの「殺人狂時代」に似ていただろうし、女性の単独犯で、殺す相手が男性ならトリュフォーの「黒衣の花嫁」です。
不機嫌で、性的に欲求不満で、太っている元看護婦と、イケメンだが頭は良くないスペイン系「つばめ」が無慈悲に女性たちを殺していく中で、互いに対する性的欲求を高めていきます。殺人とセックスは関連しているようで、実際、ある女性を殺した直後に男が女にセックスを求めるシーンがあります。ただし、直接的なセックス描写は抑制されているし、暴力描写も間接的で、そのあたりはスマートに処理していると思います。
ポーリン・ケイル女史はお気に召さなかったようですが、概して批評家が好意的に受け止めたため、20万ドルという予算を5日以内に回収できたそうです。
IMDb によると、当初の監督はマーティン・スコセッシだったそうです。プロデューサーがスコセッシの撮影方法を気に入らなくて、レナード・カッスルという監督に交代しました。レナード・カッスルの作品は、これ一本きりのようです。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)








最近のコメント