2011年8月 8日 (月)

「愛と死の記録」

8月6日、原爆の日の昼に広島テレビで放映されました。吉永小百合主演の1966年の日活作品で、白黒ワイドスクリーン。1965年3月までの1964年度の邦画興行成績で「東京オリンピック」に次ぐ第2位の大ヒットを飛ばした「愛と死をみつめて」の二番煎じみたいな気がして、さほど見る気がしなかったのですが、今月アメリカのクライテリオンから作品集が発売される蔵原惟繕監督だし、芦川いづみ様もご出演なされるので、見たわけです。ちなみに、興行成績2位といっても、「東京オリンピック」とは3倍ぐらい開きがあります。

「東京オリンピック」が東宝系で公開されたのは実際のオリンピックから5ヵ月しかたっていない1965年3月20日だったようです。それで驚いてはいけない。「愛と死の記録」は1966年の8月に撮影されて、1966年9月17日には公開されています。これもクレージー作品や網走番外地シリーズにはさまれて1966年度の7位という好成績。キネ旬のベストテンでも11位とまあまあ。(「キネマ旬報80回全史1924-2006」と「キネマ旬報ベスト・テン全集1960-1969」を参考にしています。)

吉永小百合といえば相手役は浜田光夫なのですが、この年の7月25日にレストランで電気スタンドを投げつけられ、目に重傷を負ってしまう事件が起き、前年にデビューしたばかりの渡哲也が代役を務めました(鈴木清順の「東京流れ者」はこの年の4月公開)。レコード店員の吉永小百合と恋に落ちる印刷工員で、子供の頃に被爆したために病魔に襲われてしまいます。彼の工員仲間の中尾彬、その恋人で吉永と同じレコード店に務めている浜川智子、渡の上司の佐野浅夫、医師の滝沢修など、みな好演しているし、広島でのロケが多いのも魅力的です。

芦川いづみ様がなかなか登場しないので、テレビなのでカットされたのかとヤキモキしていると、終わりごろにやっと登場。吉永小百合の隣人で、被爆者として差別されながらひっそり暮らしている女性です。それ以前の吉永の家庭のシーンで、兄の垂水悟郎と恋仲だったけれど被爆者なのであきらめざるをえなかったというのが会話の中に出てきます。また、吉永がクラシックレコードを店員特権で原価で購入して、隣に住む女性に届けているという話を渡との間でします。渡と吉永との恋愛関係の伏線として兄と芦川との関係をもっと前面に出せば、芦川の登場が生きてきたかもしれませんが、実際にはとても唐突な気がします。ワンシーンしか登場せず、こちらが彼女に対してどういう気持ちを持てばいいのかわからないから、芦川が吉永の悲劇を見つめている最後は、どう解釈していいのかわかりません。日活の清純派として直接の後輩である吉永に対して友情出演しているぐらいにしか思えません。最初に出てこないのが珍しいクレジットタイトルは最後に出てきて、吉永の一枚看板に続いて、渡と名前を連ねているんですけどね。

音楽黛敏郎、撮影姫田真佐久も良かったです。顔の印象もあってか、姫田は日活ロマンポルノの人だと私は思い込んでいたのですが、日本映画技術賞というのでは、1964年の「赤い殺意」、1965年の「日本列島」、1966年の「人類学入門」で3年連続撮影賞をもらっています。脚本は民芸の大橋喜一と小林吉男。

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2008年10月17日 (金)

名画座を閉館します

昨年の10月から1年間やってきた仮想名画座をやめます。仕事が忙しいとかで購入したDVDを見るのが億劫だったので、少なくとも週2本は見ようと思って企画したのですが、やっぱり忙しいので、ペースを保つのが難しい。

それに、本を読んで考えるのが中心になっていて、その参考に映画を見るという風に変わりつつあります。毎月いくつかDVDを購入していますが、無理して見る時間を作らなくても、見ないまま保存しておいて、気が向いたときとか、本を読んでいくうちに必要になったときとかに見ればいいや。

だから、私のイメージとしては私設フィルム・アーカイブみたいなものにして、本とDVDを保存して、ときどき研究報告をするという風にしようかなと思っています。私のサイトには「映画図書館」とDVD保管所「映画天国」があるのですが、最近何も書いていないので、まずあそこを整理しよう。物語論や認知心理学で映画を勉強しようと思っているから、けっこう映画以外の本が増えました。それにしても、物語論を勉強しようとすると、映画よりも文芸が中心になってしまって、今からじゃ時間がないので、ほどほどにしようと思ってます。

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2008年10月 7日 (火)

名画座(31):「土曜日正午に襲え」「死刑囚に聞け」

"Film Noir: An Encyclopedic Reference to the American Style" のあらすじと解説の訳は、こちらです。
 「土曜日正午に襲え
 「死刑囚に聞け

Crime Wave (1954) 土曜日正午に襲え

これ良かったです。ジャン・ピエール・メルビルの暗黒映画に近い気がしました。メルビルがこの種の映画を作り始めたのは1956年の「賭博師ボブ」だから、ほとんど直結しているって言ってもいい感じ。野外撮影や警察の無線システムが現代的な感じを出しているし、正義感やモラルのなさそうなスターリング・ヘイドンの刑事も今風だし、主人公を演じるジーン・ネルソンも現代風なイケメンです。刑事ヘイドンが禁煙していて爪楊枝をクチャクチャさせているのだけど、たしか「シシリアン」のリノ・バンチュラ刑事も禁煙してましたよね。その原型がこれなのか、それとも、これ以前にも同じ設定の作品があったのか。主人公に対して非情だったヘイドンが、最後、主人公に温情を示す唐突さはヌーベルバーグ的だし、オチのつけ方がメルビル風だ。一件落着したヘイドンはタバコを一服して、すぐに捨てるのだけど、都会の風景の中を立ち去っていくと想像していたのに、顔をアップで撮影した画面から消えるだけだったので、少々期待外れでした。4点。

Decoy (1946) 死刑囚に聞け

それに比べると、これは古臭かった。sergeant と書いてあったので巡査部長と訳したけれど、私服刑事でした。この刑事がハードボイルドのパロディみたいで、スーツや帽子をピシっと決めて、動きやセリフもキザったらしいんだけど、体がボテっとした感じだし、顔も昔の二枚目風で、なんか野暮ったい。魔性の女を演じるジーン・ギリーが大売り出しって感じで登場するのだけど、このあと1本出演したあと肺炎で亡くなったので、今や誰も知らないのではなかろうか。彼女が仲間を車で何度もひいたって訳したけど、映画を見ると1度ひいただけでした。私の誤訳か。彼女が、死ぬ間際に、刑事を馬鹿にしたように笑うのは良かった。お金の隠し場所を聞き出すために、死刑を執行された囚人を医師が生き返らせるあたり、ユニバーサルのホラー映画みたいだった。3点。

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2008年9月 4日 (木)

名画座(30):「暴力行為」「ミステリー・ストリート」

アメリカのワーナーから出ている "Film Noir Classic Collection, Vol. 4 " はDVD5枚組で、1枚につき2作品収められています。私の仮想名画座にピッタリで、その2作品ずつ上映していきます。で、最初は、フレッド・ジンネマンの「暴力行為」とジョン・スタージェスの「ミステリー・ストリート」。両方とも、しっかり作ってあって、面白かったです。どちらもMGM製作配給。

「暴力行為」は、8月13日にあらすじと解説を書き込んでいます(Alain Silver and Elizabeth Ward "Film Noir: An Encyclopedic Reference to the American Style" を訳したものです)。主人公のバン・ヘフリンの奥さんを、若くてきれいなジャネット・リーが演じています。しかし、印象に残るのは、ロバート・ライアンに追われて暗黒街に避難してきたバン・ヘフリンの面倒を見る場末の女で、メアリー・アスターが演じています。「マルタの鷹」(1941)のときだって、さほど若くはない印象だったのに、あれから7年、さらに年とった感じです。42ぐらいだったようです。解説にあるように、ロバート・サーティースの撮影が良いです。4点。

「ミステリー・ストリート」は8月16日に書き込んでいます。殺された女の家主を演じたエルザ・ランチェスターの嫌な女ぶりが良かったです。彼女の夫はチャールズ・ロートンで、夫婦そろって嫌な人物を演じるのがうまい(こういう人たちは実生活ではきっといい人たちなんだろう、と思いたい)。リカルド・モンタルバンの刑事に好感がもてるし、ハーバード大の法医学者らとのチームワークも良いので、捜査の進行を心地よく見ることができます。解説にある、犯人がボストンの旧家の出だとか、モンタルバンが少数民族だとかいうことは、セリフの中に出てきたかもしれませんが、音声も英語字幕も十分にはわからない私としては、たぶんそうなんだろうなあと思うしかないです。これは、「暴力行為」の捕虜収容所のエピソードにも当てはまります(回想シーンがなくて、セリフの中だけの話だから)。これも撮影が良くて、フィルムノワールをたくさん撮影しているジョン・アルトンが担当しています。この人はMGMミュージカル「パリのアメリカ人」でアカデミー賞をとっています。4点。

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2008年8月31日 (日)

名画座(29):「翼」「処刑の丘」

クライテリオンが今月発売したイクリプス・シリーズ第11弾はラリーサ・シェピチコ監督の2作品収録DVD。全然知らない女流監督で、1938年生まれ、1979年に自動車事故で亡くなる。ソ連の国立映画大学監督科出身。「翼 Wings」(1966)と「処刑の丘 The Ascent」(1977)。

とにかく「翼」が素敵な映画でした。第二次大戦中に女性パイロットで活躍し、中年になった現在は学校の校長をしている。自然に淡々と描いているので、ほとんど説明はないのだけど、どうも空虚さを感じているらしい。ベルイマンやアントニオーニなど、疎外感を持っている主人公が出てくる60年代の映画はウンザリするほど見た気がするけど、これもそういう一本かと思っていたら、どこか違う。そういう主人公って好きになれないものだけど、いつの間にか、この厳格そうで美人じゃない女性が好きになっている。たぶん、彼女が市場で小さな果物を買って、それを洗って食べようとするあたりからだと思う。水道から水が出ないので困っていると、雨が降りだしてきて、それで果物を洗う。そこから一人称カメラの回想になる。彼女の恋人もパイロットだけど、二人で戦闘に出たとき、彼の飛行機が撃たれて、ゆっくり下降していく。そのまわりを彼女の飛行機が「しっかりして!」という感じで付き添っている。それをカメラが遠くからとらえ、美しく哀しい音楽がかぶさる。映画の最後、彼女は空軍の訓練学校に行く。彼女は飛行機に乗ろうとするが、なかなか翼の上に乗ることができない。やっとの思いで座席に着くと、訓練生たちが翼を押して格納庫まで運んで行ってくれる。こんな和気あいあいとした終わり方をするのかと思っていたら、みんなが唖然とする中、彼女は空高く舞い上がっていく。5点。

「処刑の丘」はどうしようもなく暗い。第二次大戦中、ドイツに占領されていたベラルーシが舞台。主人公の二人の兵士は、あきらかにキリストとユダで、キリストがなにか奇跡を起こしてくれるんじゃないかと思っていたら、結局、何も起きない。もしかしたら、処刑を見物に来た少年とイエスの目が合って、少年の心に何か芽生えたらしいのが奇跡なのかもしれませんが、あまりにさりげなく描いているので、自分が勝手にそう思い込んでるだけじゃないのかと思ってしまう。巻き添えを食らった三人の市民とキリストが処刑されるあたりは迫力十分だし、音楽も強烈。一面雪で寒々として食べ物がなさそうな風景と、みんなの演技のうまさで見応え充分だけど、ラストが荒涼としているので、4点。

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2008年8月25日 (月)

名画座(28):「大追跡」「スイート・チャリティ」

「大追跡」(1965)
良かったです。抑制が利いていて、くどくないのがいいです。ブールビルとルイ・ド・フュネスはボケとツッコミなんだけど、ブールビルが中心で、ド・フュネスが脇に回っている感じで、それがかえってド・フュネスを面白くしています。イタリアのナポリからフランスのボルドーまでノンビリ車旅行を楽しめるのもいいし、途中で車に乗り込んでくるグラマーな外国娘もいい感じ。監督ジェラール・ウーリー、撮影アンリ・ドカ、音楽ジョルジュ・ドルリュー。4点。

「スイートチャリティ」(1969)
MGMミュージカルやブロードウェイで有名だった振付師ボブ・フォッシーが初めて監督した映画作品。もともと、フェリーニの「カビリアの夜」に基づいたブロードウェイのヒットミュージカルを映画化したもの。彼の「オール・ザット・ジャズ」が好きじゃないので、あまり期待せずに見たのですが、期待しなかった分だけ面白かった。面白かったのはミュージカルの部分じゃなくて、後半のドラマ部分。シャイな男性とシャーリー・マクレーン演じるチャリティが結婚しようとするエピソードです。特に、結婚届けを出すために役所に行く場面で、男性が「やっぱり僕は君と結婚する自信がない」というのがよく理解できるし、チャリティの「またか!」という気持ちもよくわかる。歌はあまり印象に残らなし、現実的な場面で突然歌いだすっていうのも苦手。ゴーゴーを基調にしたダンスナンバーのメドレーが面白かった。しかし、これにはシャーリー・マクレーンが出ていないので、私の頭の中ではダンスと歌とドラマがうまくからみあっていない。3点。

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2008年8月11日 (月)

仮想名画座上映待機作品

ようするに、DVDを購入したけど、まだ見ていないか、感想を書いていない作品。

The Joan Crawford Collection (Humoresque / Possessed / The Damned Don't Cry / The Women / Mildred Pierce) (米盤)
「ミルドレッド・ピアース」は上映済み。"The Damned Don't Cry"(悪党は泣かない)は、フィルムノワール作品リストの67番目の作品で、けっこう面白かったです。"Possessed"(失われた心」はフィルムノワールの213番目。"The Women" は、ノーマ・シアラーとロザリンド・ラッセルとの共演で、ジョージ・キューカー監督のコメディ。「ユーモレスク」は、ジーン・ネグレスコ監督、ジョン・ガーフィールド共演で、音楽に関係したドラマらしい。

The Bette Davis Collection, Vol. 1 (Now, Voyager / Dark Victory / The Letter / Mr. Skeffington / The Star)(米盤)
「Now, Voyager 情熱の航路」は上映済み。"Dark Victory"(愛の勝利)は、さほど面白くなかった。"The Letter"(月光の女)は、ウィリアム・ワイラー監督、ハーバート・マーシャル共演で、昔テレビで見て面白かった。"Mr. Skeffington" (1944)は、ビンセント・シャーマン監督、クロード・レインズ共演のドラマ。The Star (1953)は、スチュアート・ヘイズラー監督のドラマ。

Imitation of Life (米盤)
同じ原作と原題の作品二本セット。ジョン・M・スタールの「模倣の人生」とダグラス・サークの「悲しみは空の彼方に」。

Death of a Cyclist (米盤)
クライテリオン。「恐怖の逢びき」。1955年のスペイン映画。

Silent Ozu (米盤)
クライテリオン。「東京の合唱」「生まれてはみたけれど」「出来ごころ」

カレードマン大胆不敵(米版VHS)
字幕なし。ジャック・スマイト監督、ウォーレン・ビーティ、スザンナ・ヨーク主演の1966年の泥棒コメディ。昔テレビで見て面白かった。

電撃フリントGO!Go作戦 (日本盤)
ジェームズ・コバーン主演のスパイ・コメディ(1966)。これも昔テレビで見て面白かったので購入したのだけど、女の子たちといちゃつきすぎだし、女の子たちの中に好みがいないので、こんなものだったのかなあという感じ。

Written on the Wind (米盤)
ダグラス・サーク監督の「風と共に散る」(1956)。

I Know Where I'm Going! (米盤)
クライテリオン。邦題を「渦巻」という1945年のイギリス映画。監督はマイケル・パウエルとエメリック・プレスバーガー、主演ウェンディ・ヒラー。期待したほどじゃなかった。

鉄路の白薔薇 (米盤)
Kino の二枚組。

偽りの花園 (米盤)
ウィリアム・ワイラー監督、ハーバート・マーシャル、テレサ・ライト共演。とても面白かった。

泥棒株式会社 (米盤)
ピーター・セラーズ主演の泥棒コメディ。原題 "Two-Way Stretch" (1960)。

吸血鬼 (米盤)
クライテリオンの二枚組。カール・ドライヤー監督の1932年の作品。

ポランスキーの吸血鬼 (日本盤)
1967年のコメディ。トンマな助手を実に違和感なく演じているポランスキーに感心します。

Gaunt Stranger (米盤)
イーリングスタジオ作品リストの最初に出てくる作品。1938年のイギリスのミステリー。

シェーストレム作品(米盤)
Kino から発売された「インゲボルイ・ホルム」「波高き日」「生恋死恋」(1910年代後半)。

大追跡 (日本盤)
ジェラール・ウーリー監督、ルイ・ド・フュネス、ブールビル主演のコメディ。アンリ・ドカ撮影、ジョルジュ・ドルリュー音楽。1965年。

雨のしのび逢い (日本盤)
原作マルグリット・デュラス(「モデラート・カンタービレ」)、監督ピーター・ブルック、主演ベルモンド、ジャンヌ・モローの暗いドラマ。1960年。

スイートチャリティ (日本盤)
監督ボブ・フォッシー、主演シャーリー・マクレーンのミュージカル。フェリーニの「カビリアの夜」のリメイク。

2年後の「60年代のゴダールを楽しむ」年のために購入したDVD。
小さな兵隊(日本盤)、はなればなれに(米盤)、恋人のいる時間(日本盤)、メイドインUSA(日本盤)、ウイークエンド(米盤)

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2008年8月10日 (日)

名画座(27):「生きるべきか死ぬべきか」「天国は待ってくれる」

少し前に感想を書いたポランスキー短篇集を第26回名画座上映にしたので、今回は27回目。ルビッチの晩年の作品。1947年に亡くなった時は55歳の若さだったから、晩年って言っていいのかどうかわかりませんが、この二作はその数年前の作品だし、このあとはあまり有名でないのを二本か三本作っただけです。

この二作品は1990年ごろに日本で上映されて、その時も見に行きました。今持っているのは、「生きるべきか死ぬべきか」が安い日本版DVDで、「天国は待ってくれる」はアメリカのクライテリオン版です。

どちらも、面白すぎて面白くない。脚本がよく練られているのか、なんか話がうますぎる。面白いけど、「極楽特急」や「街角」のように大好きになれない。たぶん、主人公たちがいい加減な浮気性の男に見えるからだと思う。ルビッチ監督のミュージカルコメディもモーリス・シュバリエが浮気性のお調子者なので、なんか好きになれない。「極楽特急」も浮気の話だけど、ハーバート・マーシャルは誠実に見えた。でも、戦時中にナチスを題材にこんなバカバカしいコメディを作ったものだと感心するので「生きるべきか死ぬべきか」は5点。「天国は待ってくれる」は4点。

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2008年6月27日 (金)

名画座(25)「ステラ・ダラス」「天の許し給うすべてのもの」

「ステラ・ダラス」(1937)は、キング・ビダー監督、バーバラ・スタンウィック主演のメロドラマ。プロデューサーはサミュエル・ゴールドウィンで、音楽アルフレッド・ニューマン、撮影ルドルフ・マテ。下品な母親バーバラ・スタンウィックが上品に育った娘アン・シャーリーの幸せのために身を引く話(アン・シャーリーは自分が主演した「赤毛のアン」の主人公から芸名を頂戴したらしい)。娘は、母親の下品さに戸惑うこともあるけど、母親を愛しているので、母親から離れようとしないという設定が泣かせます。二人が寝台車の上下ベットで横になっているとき、娘の友人たちが「あの悪趣味な服を着た人って彼女の母親だそうよ。彼女、かわいそうだわ」と会話しているのを聞いて、母親は娘を心配させまいとして寝たふりをするんだけど、母親を心配した娘が下のベットに降りてきて二人で抱き合って寝るというシーンは泣かせます。それから、父親の再婚相手の家庭が信じられないぐらい幸福な家庭なのも面白いと思いました。徹頭徹尾バーバラ・スタンウィック扮するステラ・ダラス中心の映画なのだから、彼女から見た再婚相手の家庭をイメージしていると思えば、これくらいリアリティがないほうが気持ちいい(利発な子供たちには少々辟易しますが)。夫との離婚と娘を金持ちの再婚相手に引き取ってもらうことを決意して、それを再婚相手に伝えるシーンも泣かせます。自分が社会の落ちこぼれだと自覚して、ひそかに身を引くという話では、長谷川伸原作、山下耕作監督、中村錦之助主演の「関の弥太っぺ」も大好きで、たぶん自分と重なる部分があるからでしょう。下品なはずの主人公が思慮深く見えるシーンなど一貫性に欠ける部分があるし、主人公の悪趣味な服をカラーで見たい気もするけど、5点。

ダグラス・サークの "All That Heaven Allows" (1955) は日本では劇場未公開だけど、「天の許し給うものすべて」という題名でDVDが出ているようだし、レンタルもできるようです(私が購入したのはアメリカのクライテリオンから出たもの)。アメリカの小さな町を俯瞰で捉えた映像に優雅で情感あふれるピアノ協奏曲が重なる開巻から、実に丁寧に作られていると思わせてくれます。並木の枯葉はわざわざ塗ったんじゃなかろかというぐらい効果的に秋を表現しています。その間を水色の車が通っているなあと思っていると、その車のアップになり、青いドレスを着たアグネス・ムアヘッドが降りてきます。この開巻からぐっと引きつけられて、裕福な未亡人ジェーン・ワイマンとマッチョな庭師ロック・ハドソンの身分を超えた恋愛劇を堪能したのでした。ジェーン・ワイマンの息子と娘は自分たちの母親が庭師と結婚することに大反対するのですが、それは母親のことを思ってではなく、自分たちの都合によって。「ステラ・ダラス」の娘とは大違いだ。撮影ラッセル・メティ、音楽フランク・スキナー(リストやブラームスの音楽を使用しているようです)。プロデューサーのロス・ハンターについて調べたかったけど、それはまたの機会に。ジェーン・ワイマンとロック・ハドソンの組み合わせがピンとこないので、4点。

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2008年6月 9日 (月)

名画座(24)「街は春風」「ミッドナイト」「少佐と少女」

今回は、「街は春風」と「ミッドナイト」の二本立ての予定でしたが、同時に買った「少佐と少女」も加えて三本立てにします。すべて米版DVDで、ユニバーサル・クラシックス・シリーズとして本年4月22日に発売されたもの。ユニバーサルといっても、DVDの会社がユニバーサルで、もともとユニバーサル社の映画は「ミッドナイト」のみで、ほかの二本はパラマウント映画。

「街は春風」(1937, Easy Living)は邦題がロマンチックですが、ほぼ完全にドタバタコメディ。社長夫婦がケンカして、社長がビルから奥さんの高級毛皮コートを投げ捨てると、ニ階建てバスの、天井のない二階に座っていたジーン・アーサーの上に落ちるというのが発端。社長に取り入ろうとするホテルのオーナーが彼女を社長の愛人と間違えて、彼女をホテルの豪華な客室に住まわせる。彼女は簡易食堂のウェイターと知り合い、自室に招くが、彼は社長の息子。脚本はプレストン・スタージェス。簡易食堂での大騒ぎなど、ハリウッド映画お得意の破壊的なドタバタばかりで、ケチで小心な私としては、面白いというより、オロオロするばかり。超メタボ腹の社長エドワード・アーノルド(キャプラの「我が家の楽園」や「スミス都へ行く」でおなじみ。そういえば、どちらもジーン・アーサー主演)が終始けたたましく、見てるこちらも血圧が上がる。4点。

それに比べると「ミッドナイト」(1939, Midnight) は落ち着いて見ることができます。これもミッチェル・ライゼン監督で、脚本はチャールズ・ブラケットとビリー・ワイルダー、主演クローデット・コルベール、共演ドン・アメチ、ジョン・バリモア。コーラスガール、コルベールが、イブニングドレス姿だが無一文でパリにやってくる。タクシードライバー、ドン・アメチから好意を寄せられるが、貧しい生活はゴメンと彼から逃れ、ある音楽会に潜入する。そこは金持ちばかりの集まりで、コルベールはハンガリーかどこかの男爵夫人だと偽る。ジゴロが彼女に目をつける。そのジゴロに夢中の妻を持つジョン・バリモアが、妻の愛を取り戻すために、コルベールの偽りがばれないようにする。そこへ、コルベールの夫の男爵だと名乗るドン・アメチ登場。という傑作な話が快調に進むのですが、最初が少々尻すぼみな感じ。でも5点。

今回一番ゴキゲンだったのがビリー・ワイルダーの監督デビュー作「少佐と少女」(1942, The Major and the Minor)。脚本は、「ミッドナイト」と同じチャールズ・ブラケットとワイルダー。時代が少し遅いからか、ビリー・ワイルダーが戦後の監督といった感じだからか、テンポが速いのか、ほかの二作品よりぐっと現代的な気がする。大都会の生活にウンザリしたジンジャー・ロジャーズが田舎に帰ろうとするが、列車の切符代が足りない。そこで12歳の少女のふりをして列車に乗り込む。列車内で少佐レイ・ミランドと出会い、彼が先生を務めている士官学校に何日か宿泊することになり、そこでドタバタ騒ぎが展開する。実際には30を超えていたジンジャー・ロジャーズの12歳は少々キツイが、見ているうちに慣れてくる(額のテカリが少々気になるけど)。大人たちは彼女を12歳と信じるが、それを見破る10代の小生意気なダイアナ・リンが可愛い(「モーガンズ・クリークの奇跡」も良かった)。5点。

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