「愛と死の記録」
8月6日、原爆の日の昼に広島テレビで放映されました。吉永小百合主演の1966年の日活作品で、白黒ワイドスクリーン。1965年3月までの1964年度の邦画興行成績で「東京オリンピック」に次ぐ第2位の大ヒットを飛ばした「愛と死をみつめて」の二番煎じみたいな気がして、さほど見る気がしなかったのですが、今月アメリカのクライテリオンから作品集が発売される蔵原惟繕監督だし、芦川いづみ様もご出演なされるので、見たわけです。ちなみに、興行成績2位といっても、「東京オリンピック」とは3倍ぐらい開きがあります。
「東京オリンピック」が東宝系で公開されたのは実際のオリンピックから5ヵ月しかたっていない1965年3月20日だったようです。それで驚いてはいけない。「愛と死の記録」は1966年の8月に撮影されて、1966年9月17日には公開されています。これもクレージー作品や網走番外地シリーズにはさまれて1966年度の7位という好成績。キネ旬のベストテンでも11位とまあまあ。(「キネマ旬報80回全史1924-2006」と「キネマ旬報ベスト・テン全集1960-1969」を参考にしています。)
吉永小百合といえば相手役は浜田光夫なのですが、この年の7月25日にレストランで電気スタンドを投げつけられ、目に重傷を負ってしまう事件が起き、前年にデビューしたばかりの渡哲也が代役を務めました(鈴木清順の「東京流れ者」はこの年の4月公開)。レコード店員の吉永小百合と恋に落ちる印刷工員で、子供の頃に被爆したために病魔に襲われてしまいます。彼の工員仲間の中尾彬、その恋人で吉永と同じレコード店に務めている浜川智子、渡の上司の佐野浅夫、医師の滝沢修など、みな好演しているし、広島でのロケが多いのも魅力的です。
芦川いづみ様がなかなか登場しないので、テレビなのでカットされたのかとヤキモキしていると、終わりごろにやっと登場。吉永小百合の隣人で、被爆者として差別されながらひっそり暮らしている女性です。それ以前の吉永の家庭のシーンで、兄の垂水悟郎と恋仲だったけれど被爆者なのであきらめざるをえなかったというのが会話の中に出てきます。また、吉永がクラシックレコードを店員特権で原価で購入して、隣に住む女性に届けているという話を渡との間でします。渡と吉永との恋愛関係の伏線として兄と芦川との関係をもっと前面に出せば、芦川の登場が生きてきたかもしれませんが、実際にはとても唐突な気がします。ワンシーンしか登場せず、こちらが彼女に対してどういう気持ちを持てばいいのかわからないから、芦川が吉永の悲劇を見つめている最後は、どう解釈していいのかわかりません。日活の清純派として直接の後輩である吉永に対して友情出演しているぐらいにしか思えません。最初に出てこないのが珍しいクレジットタイトルは最後に出てきて、吉永の一枚看板に続いて、渡と名前を連ねているんですけどね。
音楽黛敏郎、撮影姫田真佐久も良かったです。顔の印象もあってか、姫田は日活ロマンポルノの人だと私は思い込んでいたのですが、日本映画技術賞というのでは、1964年の「赤い殺意」、1965年の「日本列島」、1966年の「人類学入門」で3年連続撮影賞をもらっています。脚本は民芸の大橋喜一と小林吉男。
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