本: Film Structure and the Emotion System
筆者はグレッグ・M・スミス Greg M. Smith というジョージア州立大学でコミュニケーションを教える助教授(この本が出版された時点では)。「映画の構造と感情システム」という題名どおり、どのように映画が観客から感情を引き出すかについて書かれた本。感情というものは論じにくいものだから、映画が物語を伝える知的な枠組、あるいは観客が物語を理解する知的な枠組を勉強していたつもりだけど、感情について書かれた本をあちこち見かけると、本当は自分は感情について勉強したかったんじゃないかと思えてきます。
ただ、どのように映画が観客に作用するかという観点から書かれているので、見る側の働きに興味のある私としては、今ひとつ面白くなかった。作品側からのアプローチと見る側からのアプローチは表裏一体だろうから、興味を持たなくてはいけないと思っていても。ケーススタディとして、バーバラ・スタンウィック主演の「ステラ・ダラス」、エイゼンシュテインの「ストライキ」、ルノワールの「ピクニック」と「どん底」、ウェイン・ワンの「ジョイ・ラック・クラブ」、おなじみ「カサブランカ」を詳しく論じているので、手元にないものを補充しつつ、作品を見ながら詳しく読んでいこうかなとも思いましたが、今のところはやめておきます。でも、暇があれば、手元にある「ステラ・ダラス」と「ピクニック」の部分だけでもやってみようかなとは思っています。「カサブランカ」はテレビで録画したものを持っているのですが、さほど好きなわけではないので、これが文句のつけようのない傑作みたいに書かれると、なんか鼻白んでしまう。
この人は mood-cue approach というのを提唱しており、より持続するムードと、あまり持続しない感情を引き起こすきっかけ (cue) の相互作用がうまくいっているかどうかによって作品を分析しています。ムードを作れば感情を引き起こしやすくなるし、感情を引き起こし続けることでムードが持続する。このアプローチによって上記の作品を論じているし、他にも「サイコ」、インディ・ジョーンズの一作目、「ストレンジャー・ザン・パラダイス」などを用いて例証しています。
他の認知主義による本として、ノエル・キャロル Noel Carroll の "The Philosophy of Horror, or Paradoxes of the Heart"、エド・タン Ed Tan の "Emotion and the Structure of Narrative Film: Film as an Emotion Machine"、トーベン・グロダル Torben Grodal の "Moving Pictures: A New Theory of Film Genres, Feelings, and Cognition" の三冊を紹介し、それらと mood-cue approach を比較している章があります。これらの本は、定価で買えば高いのもありますが、安い古本を見つけたので、三冊とも注文中。
それにしても、感情ってなんだろう。ニコ・H・フライダ Nico H. Frijda の"The Emotions" という本が手元にあるので、三冊が届くまで、これをざっと読んでおきたい。といっても、日曜学者だし、日曜はたいてい仕事なので、次にこういうことをここに書くのがいつになるかわからないけど。
その本は、感情に関する以下の問題を考察しています。
(1) 「感情」や「感情的」と呼ばれる現象の本質は何か。
(2) それらの現象はどのような条件(刺激、気質、活動)によってもたらされるのか。
(3) それらの現象が何らかの機能を果たすとしたら、それはどのような機能か。
(4) どのようなプロセスやメカニズムによって条件が現象をもたらすのか。
本全体は大きく3つに分かれており、パートI「分析」で問題1を、パートII「前提」で問題2と3を、パートIII「総合」で問題4を考察しています。
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