2009年12月24日 (木)

ノーマン・マクラレン作品 (39)

Pinscreen (1973)
約40分。カラー、サウンド、16ミリ。

「禿山の一夜」(1933)で有名なアニメーション作家アレクサンドル・アレクセイエフが講習会で彼発明のピン・スクリーンによるアニメ制作を説明している様子を撮影したもの。一般公開用ではないらしく、単に記録している程度。彼の素晴らしい作品が出てくるのは終わりのほうで、最初に出てこないから、ピン・スクリーンによってどんな作品ができるのかわからなくて、ずっともどかしい思いをしていました。最初に彼の作品の断片を少しでも見せてくれていれば、もっと興味がわいたのに。ピン・スクリーンがどんなものかは、キネ旬の「世界映画人名事典・監督(外国)編」で森卓也さんが次のように書いています。「無数のピンを立てた板面に斜から光をあて、ピンの高低を加減するとピンの影による明暗が微妙に変化する。で、その濃淡のトーンで絵を作る、というもの。それを小さなローラーなどで押して少しずつ変化させながら一コマ撮影をしてアニメイションにする。」相当な手間と根気がいるようで、「禿山の一夜」以外でピン・スクリーンを使用しているのは三作だけということです。こういうことを知って、あらためて見れば、もっと興味がわきそうですが、そこまでの興味なし。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年12月22日 (火)

ノーマン・マクラレン作品 (38)

Ballet Adagio (1972)
約10分、カラー、サウンド
音楽: アルビノーニのアダージョ
ダンサー: David and Anna Marie Holmes

1ヵ月と10日ぶりにノーマン・マクラレンが返ってまいりました。あと、数本なので、マクラレン鑑賞企画も今年中に楽々と終えることができると思いましたが、家族に不幸があったために、あと10日でなんとかしなければならなくなりました。これを今年中になんとか終えて、来年は60年代のゴダール作品を娯楽映画として楽しむというのをやるつもりです。

YouTube で見ることができます。1967年の「パ・ド・ドゥ」同様にバレエを題材にしています。「パ・ド・ドゥ」はバレエを知らなくても特殊技術を駆使した映像で楽しむことができましたが、「バレエ・アダージョ」は男女が踊るバレエをスローモーションで撮影しているだけだから、バレエに興味のない私には、かなりつらい。アルビノーニのアダージョがムードを盛り上げてくれていますが、映像がなくても聴く者の感情を十分に喚起させてくれる曲ですからね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年11月12日 (木)

ノーマン・マクラレン作品 (37)

Synchromy (1971)
約7分30秒、カラー、サウンド
音楽: ノーマン・マクラレン

「シンクロミー」というタイトルで、日本版5枚組ボックスセットだけでなく、「ノーマン・マクラレン傑作選」にも収められています。私の辞書に "synchromy" はないのですが、シンクロというからには、同調性というような意味合いがあるのでしょう。1940年代からマクラレンが行っていたサウンドトラックに直接音を書き込む試みの集大成に思えます。どういう音を出すかを書いた図をフィルムのサウンドトラックに印刷して、さらに映像自体でもその図を見せるという趣向です。そうした技術的なことを知ればもっと面白いだろうし、手が込んでいるのもわかるのだろうけど、私のような素人だって楽しめます。これまでの抽象的な彼の作品同様、一つの物が複数かつ色彩豊かになっていくし、電子音のような音楽も、機械的ではなく、ユーモラスで人間味があります。YouTubeで見ることができます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年10月28日 (水)

ノーマン・マクラレン作品 (36)

Spheres (1969)
約7分30秒、カラー、サウンド、16ミリ
アシスタント: ルネ・ジョドワン Rene Jodoin
音楽: グレン・グールドのピアノによるバッハ

邦題は「球の配列」。6月26日に書いた "A Phantasy" という1950年ごろの作品に基づいています。あらためて両作品を見ても、6月26日に書いたこと以上のことが思い浮かびません。ただ、2ヵ月前に "Spheres" が YouTube にアップロードされ、現時点では両方とも YouTube で見ることができます。各自検索して、比べてみてください。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年10月15日 (木)

ノーマン・マクラレン作品 (35)

Pas de deux (1967)
約13分、白黒、サウンド
音楽監督: モーリス・ブラックバーン
演奏者: Dobre Constantin (パンパイプ)、United Folk Orchestra of Romania
ダンサー: Margaret Mecier, Vincent Warren


題名の「パ・ド・ドゥ」は男女二人による踊りを意味するバレエ用語。バレエをどう鑑賞すればよいのかわからないので不安でしたが、心配ご無用。バレエは単なる素材で、それに基づいた抽象的な動きや特殊効果によって十分楽しめる作品になっています。これは先日、日本で発売されたボックスセットにも傑作選にも収められています。動画サイト Dailymotion や YouTube でも今のところ見ることができます。コントラストの強い白黒映像で、ダンサーの顔や体はほとんど見えなくて、真っ暗なバックに体の輪郭のみが白く浮き出ています。最初は女性のみが登場し、ザ・たっちの幽体離脱のように一つの体が二つに分かれます。最初の体が止まっている間に離脱した体が踊りながら別の位置で止まると、最初の体が同じ動きをしながらその位置まで来て、合体します。それが何度か繰り返されたのち、二つに分かれた女性ダンサーが鏡のように左右対称に同じ踊りをします。そこへ男性ダンサーが登場し、今度は二人のダンサーが連続ストロボ撮影のように時間のずれた五重、六重の体になって踊り始めます。パンパイプを中心にしたルーマニアの民族楽団による音楽が重層で物悲しくて、非常に印象的です。韓国映画の「西便制」やフランソワ・ド・ルーベ音楽による南米が舞台か異国出身のギャングが登場するフランス製犯罪映画を思い起こさせます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年10月 1日 (木)

ノーマン・マクラレン作品 (34)

Mosaic (1965)
約5分半、カラー、サウンド
助監督: イブリン・ランバート
音楽、サウンド: マクラレン

言葉で表現するのが難しいので、どこかの動画サイトにアップロードされていないかなと探してみたら、アップロードされていた形跡は残っているものの、たぶん著作権のおかげで、どこでも削除されているようです。マクラレンが口笛を吹きつつ、小さなボールか小石をもてあそびながら中央までやってきて、それを宙に吹き飛ばして去っていくと、その小さな白いものがいっぱい増えて、複雑なパターンを描き始めます。どう見てもコンピューターで作成したとしか思えないような規則正しい動きなんだけど、この頃そんな技術は発達してなかっただろうから、いったいどうやって作ったのだろうと思ってしまいます。実は、1960年の「垂直線」と1961年の「水平線」を白黒にして重ね合わせたもので、黒い背景に対して垂直に動く白い線と水平に動く白い線が重なった箇所のみが白い点として画面に残り、それが複雑なパターンとなっています。それに再び着色し、おなじみのフィルムのサウンドトラックに直接刻んだ音を加えて、完成させたものです。わかりにくいですか。どこかで映像を探してください。せめて1枚組の傑作選に入っていればいいのに、5枚組のボックスセットの定価が2万5千円もするんじゃね。円高のおかげで、米アマゾンのマーケットプレイスなら新品の7枚組米版を送料込み7千円ぐらいから購入できるし、米アマゾン自体から購入しても送料込み1万円もしないようです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年9月19日 (土)

ノーマン・マクラレン作品 (33)

Canon (1964)
約9分。カラー、サウンド。
助監督: グラント・マンロー
音楽: エルドン・ラスバーン

Dailymotion というフランスの動画共有サイトで見ることができます

全体が四つの部分でできており、各部分で同種類の四つの物が登場し、「カノン」(輪唱)というタイトルのように、各々が同じような動作を繰り返します。

最初は四隅から人間の手が四本出てきて、手を重ね合わせ、一番下の手が一番上に置かれる動作が繰り返されます。実写です。

二番目は、各々ABCDと書かれた四つのサイコロみたいなのが出てきて、チェス盤のような板の上で同じ動作を繰り返します。実写のコマ撮りです。

三番目は、単純でユーモラスな同一のアニメキャラクターが色違いで四つ登場し、同じようなユーモラスな動作を繰り返します。

最後のは全体の半分ほどの時間を占めます。男性が四人出てきて、ピタゴラスイッチのアルゴリズム行進のようなパターン化された変な動きをしながら、右に一人ずつ出ていくと、左から一人ずつ入ってくるといった具合。この四人は同一人物のようだから、多重撮影しているのでしょう。女性が登場しますが、たぶん同じ男性が女装しているんじゃないかと思います。

音楽は、フィルムのサウンドトラックに直接刻んだもののほかに、ピアノやほかの楽器も使われているようだし、当時の電気技術で加工したような音も聞こえてきます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年9月13日 (日)

ノーマン・マクラレン作品 (32)

Lines Horizontal (1961)
約6分、カラー、サウンド
助監督: イブリン・ランバート
音楽: ピート・シーガー

8月26日に書いた(29)"Lines Vertical" の垂直線を水平線にした作品。一本の横線が二本になり、それが上下しながら交差していくうちに数が増えていき、十数本になり、また一本に戻っていくというもの。前作と同じようにバックの色が変化します。前作の音楽は、モーリス・ブラックバーンの電子ピアノによる現代音楽でしたが、今回はアメリカのフォークシンガー、ピート・シーガーによるものです。笛、ギター、バンジョー、マンドリンが使われており、アイルランドの民謡みたいな静かな感じで始まり、テンポの速いブルーグラス風になり、中東かどこかの異国情緒になり、映像と同じように元に戻っていくというものです。歌詞はないです。こういう変な展開のインストが当時のアルバムに入っていたとも思えないので、この映像作品のために作られたものでしょう。先月日本で発売されたボックスセットにも傑作選にも「水平線」という邦題で収められています。カナダ国立映画制作庁(NFB)の紹介ページはこちら。YouTubeにもアップロードされているので、原題で探してみてください。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年9月 8日 (火)

ノーマン・マクラレン作品 (31)

New York Lightboard (1961)
約8分、白黒、サイレント、16ミリ

New York Lightboard Record (1961)
約8分、白黒、サイレント

ニューヨークのタイムズスクエアの電光掲示板に広告を出すから何か作ってくれとカナダの観光局から依頼があったので、マクラレンが作ることになったようです。白黒でサイレントなのは当時の電光掲示板の技術的な制約のためでしょう。白地に黒い文字で "CANADA" とか "VISIT" とかといった単純な言葉が大きく書かれており、ある単語が花火や馬などの絵に変化して、今度はその絵が別の単語に変化していくのが繰り返されます。単純な言葉が大きく描かれているのも電光掲示板ゆえでしょう。二番目の "New York Lightboard Record" というのは、その作品が実際にタイムズスクエアの電光掲示板で上映されている様子をとらえたドキュメンタリーです。電光掲示板に映っている作品、その前を通る車、足を止めて興味深げに電光掲示板を見上げる通行人などがとらえられています。いったい何のために撮影されたのかわかりませんが、二本続けて見ると、けっこう面白いです。今度発売された日本版ボックスセットでは「ニューヨークライトボード」と「ニューヨークライトボードの記録」という邦題になっているようです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年9月 3日 (木)

ノーマン・マクラレン作品 (30)

Opening Speech 1960
約6分半、白黒、サウンド
助監督: アーサー・リプセット Arthur Lipsett

先月日本で発売されたマクラレンのボックスセットには「マクラレンの開会の辞」という邦題で収められているようです。マクラレンはモントリオール国際映画祭の名誉会長に選ばれたのですが、これはそのときのあいさつを実況したものではなく、たぶん、映画祭の参加者を歓迎するために作られたものじゃないかと思います。マクラレンが舞台に登場して開会の辞を述べようとしますが、マイクがあちこち動くので、「紳士淑女のみなさん」から先に進むことができません。土台にクギを打ちつけてマイクの台を固定すると、今度はマイクそのものが左右上下に勝手に動き始めます。ロープでマイクを固定するのですが、やっぱりうまくいかず、マイクがばらばらになってしまいます。1957年の "A Chairy Tale"(「いたずら椅子」)で椅子が言うことを聴かないように、相手を支配下に置こうとするからいけないんで、仲良く共存しようとすればうまくいくというメッセージを送っているように見えます。しかし、結局マイクとは相性が合わず、「キートンの探偵学入門」のようにマクラレンが背後のスクリーンに身を投げると、ご陽気な音楽になり、画面にいろんな国の言葉で「歓迎」の文字が表示されます。このハッピーな最後の部分のおかげで、マイクとのもどかしい葛藤が吹っ飛んでしまい、愉快な作品だという印象が残るのみです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧