蔵原惟繕のゆがんだ世界
今週はキートンをお休みにして、先月下旬に発売されたクライテリオンのイクリプス・シリーズ第28弾 "The Warped World of Koreyoshi Kurahara" に収録されている5作品について簡単な感想を書きます。
Intimidation (1960)
「ある脅迫」。1時間ほどの添え物。金子信雄と西村晃が主演するなんて添え物ならではの利点。金子信雄が銀行の地方支店から東京に栄転する際に、どこからともなくやってきたサングラス姿の草薙幸二郎から横領をネタにゆすられる。金子は草薙に払うお金欲しさに自分の銀行に忍び込み、宿直当番の部下西村晃をおどして金庫のお金を盗もうとするが、途中で西村に正体を見破られる。金子は、銀行の警備が不安なので転勤する前に強盗の実験をしてみたんだとごまかす。まだ話は続くのですが、ここまでにしておきます。原作は多岐川恭。金子にべったりくっついている疫病神のような西村晃が好演。ノワールなムードを漂わせた草薙が田舎町にやってきて、浜村純の雑役係をおどして銀行に押し入り、ピストルを浜村に発射するとライターだったという開巻から引き込まれます。
The Warped Ones (1960)
「狂熱の季節」。あきらかに「勝手にしやがれ」へのオマージュ。キネ旬の「ベスト・テン全集1960-1969」によると、「狂熱の季節」は小林旭主演の「南海の狼火」とともに9月3日に封切られており、「勝手にしやがれ」は半年前の3月に日本で封切られています。最初の20分ほどのスピーディーさと川地民夫のベルモンドのような傍若無人さがたまりません。特に郷鍈治と出会う少年院での様子をタイトルバックだけで語り切ってしまう手際のよさには惚れぼれします(郷鍈治のデビュー作)。まったく悪びれることなく外人と寝て金を稼ぐ現代的な千代侑子(ちしろ・ゆうこ)もイカす。松本典子が川地に犯されるシーンが強烈でないことや、途中から話がさほど展開していかないのが残念だけど、川地の傍若無人さが最後までブレないし、川地と千代のカップルと長門裕之と松本のカップルの四角関係を川地が皮肉るオチが面白い。
I Hate But Love (1962)
石原裕次郎と浅丘ルリ子の「憎いあンちくしょう」。二人とも下着シーンのサービスがありますが、下着のデザインが古臭いのが残念。売れっ子タレントの石原がテレビの生番組でおんぼろジープを九州まで運ぶことを請け負い、ほかのスケジュールをおじゃんにして、九州まで運ぶ話。浅丘は石原のマネージャー兼恋人。二年間恋人を続けているが、キスもしないし関係も持たないという条件付き。このウソくさい恋人関係を楽しんでいた浅丘がスポーツカーのジャガーで石原を追いかけていくうちに、ジャガーも何もかもかなぐり捨てて、アデル・ユーゴーのように愛のためだけに生きる女性へと変わっていく様子に説得力がありました。芦川いづみ様はかなり地味になられてしまいましたが、浅丘に対して自分の恋愛は本当の愛だとか勝ち誇ったように言うシーンで一瞬輝いていました。でも、ラストでの扱われ方はひどい。うちの近所で、今は尾道大橋がかかっているあたりが出てくるのがうれしかったです。これのみカラー(下記の「愛の渇き」も少しだけカラーになります)。
Black Sun (1964)
「黒い太陽」。川地民夫は「狂熱の季節」と同じキャラクターのようです。でも、4年も自分勝手に生きていると、単に貧乏で変な人になってしまい、カッコ良さがなくなって、コッケイにさえ感じてしまいます。彼は都会にある廃墟の教会の上のほうに住んでいて、この教会が印象的。本当につぶれかけている教会を利用したのだろうか。最初からセットで作ったのならすごい。川地民夫は相変わらず黒人のジャズに夢中で、右足のももに弾丸をくらっている黒人の脱走兵チコ・ローランドが苦しんでいるのに、黒人ならみんなジャズが好きだと思いこんでいて、自分勝手にジャズの話しかしない。途中は川地が黒塗りの顔、チコが白塗りの顔で逃避行を続ける。ほとんど話に進展がないのでイライラしてきますが、最後に黒人がアドバルーンに宙づりにされて空高く舞い上がるイメージが強烈で、アドバルーンとともにイライラも吹っ飛んでしまいました。「狂熱の季節」で印象的だった千代侑子も同じ役で少し登場。最初の「ある脅迫」を除いた4作品すべて黛敏郎が音楽を担当しています。「狂熱の季節」と「黒い太陽」は主人公がジャズ好きだから、全編ジャズが流れています。「黒い太陽」で流れるドラムのマックス・ローチのバンド演奏とアビー・リンカーンの歌は、この映画のために録音されたものらしいです。この二作品を一緒にしたサントラが出ています。
Thirst For Love (1967)
三島由紀夫原作の「愛の渇き」。小津作品で上品に下品なことを言う中村伸郎は、好色爺さん役も得意。ここでは、亡くなった次男の嫁浅丘ルリ子と関係を持っている。長男は週1回大学でギリシャ語を教えるだけの講師で、妻とともに居候している。長女は子供二人を連れた出戻り。だから資産家の父親である中村が一家を支配している。頭が弱いのか、少々つかみどころのない庭師を石立鉄男が好演しており、浅丘は若い石立に欲望を感じ、石立も浅丘に魅せられている。浅丘は中村と東京に移り住むことになり、その前夜、石立と密会するが、悲惨なことになってしまう。いくらか実験的なことをやっていますが、中心の物語から大きく外れることもないので、映画を豊かにする味つけになっています。予想していたように耽美的な映像が延々と続くことなく、面白く見ることができました。1967年のキネ旬7位。蔵原監督は、この作品で日活とトラブルを起こしてフリーになりますが、日活から与えられたジャンルの枠組みがなくなったとき、果たして、より芸術的に満足のいく映画を作れるようになったのかどうか。石立の子供を宿り、嫉妬心からか浅丘の命令で堕胎させられ、実家に戻されてしまう女中は紅千登世(くれない・ちとせ)という女優さん。武智鉄二監督がワイセツ罪で起訴された1965年の「黒い雪」で映画初出演し、全裸で米軍基地のまわりを走り抜けて話題になったとか。
| 固定リンク


コメント
憎いあんちくしょう ぜひ 見たいナァ
歴史的 青春時代的 大スターですね。
プログで 石原裕次郎で 検索しています。
私は 銀幕スターの裕次郎さんが 大活躍されたことを知らない世代です。どの映画が 今 一般が 見ても 面白いかなぁ?レンタルDVD全作品あるかなぁ?
裕次郎さんが テレビ時代に挑戦した頃の 太陽にほえろ時代を 少し 知っています。世界的 歴史的 美男を探す会(名前検討中
石原裕次郎を語る会
投稿: 村石太レディ&勝利者&ちあき | 2011年10月21日 (金) 00時07分