キートンのサイレント長編集 (4): 「キートンの探偵学入門」(2)
で、最後は悪漢たちに追いかけられるシーン。「セブン・チャンス」や「キートンの蒸気船」ほど大掛かりじゃないですが、いろんな仕掛けがあって、見てて小気味よい。
キートン扮するシャーロック・ジュニアが追いかけられていると、警官に扮装した助手がオートバイに乗ってやってきて、キートンをハンドルの上にのせて逃げる。映画を見ているときには気づく余裕がないのですが、スチール写真を見ると、このハンドルはキートンが座りやすいように改良してしるようです。
水たまりで、運転している助手がバイクから落ちてしまいます。キートンがスタントなしで全部自分で荒業をやっているのはもちろんですが、ここでは他人のスタントさえやってしまう。すなわち、バイクのうしろに落ちる助手をキートンが代わりに演じているのです。じゃあ、キートンの代わりにハンドルに乗っているのは誰かというと、アーニー・オルサッティ Earnie Orsatti という小道具係らしい。キートンの最後の奥さんエレノアが日本でのリバイバル公開のために1973年12月に来日して語ったことが「キートンの探偵学入門」のパンフレットに掲載されているのですが、彼は野球が上手で、「キートンのカレッジ・ライフ」(1927)の野球シーンを技術指導したのち、キートンの紹介でプロ野球選手になり、1930年から32年まで3年連続でセントルイス・カーディナルスで優勝し、結局18年間選手生活を続けたとか。息子二人もスタントマンとして有名で、「ターミネーター」でシュワルツェネッガーのスタントをしたそうです。オルサッティのほかの3兄弟はハリウッドで最も大きな俳優エージェンシーを経営していて、60年代半ばにキートンとオルサッティが相次いで亡くなったあと、オルサッティ夫人に乞われてエレノアと妹はその会社で働くようになったそうです。
アップになってバイクの下が見えないショットは、バイクを車に固定させて撮影しているのでしょうが、運転手のいないバイクのハンドルにキートンが乗って、車の間を縫うように走り抜けるなどのフルショットは実際にキートンが巧みにハンドル操作しているようです。
列車とぶつかりそうになるシーンはスクリーンプロセスでしょう。事前に車で撮影した映像をバックに流して、バイクに似せた台に乗ったキートンを横から撮影しているのだと思います。
途中で途切れている陸橋の上をバイクが疾走するシーンで、ちょうどトラックが二台やってきて途切れた個所をふさいだために、バイクが落ちることなく走り抜けることができるのですが、途切れている箇所は画面には見えない板が敷いてあるのだと思っていたら、最初に途切れていない橋をバイクが走る上半分を撮影して、そのあと、フィルムを巻き戻して、途切れている橋と二台のトラックが通り過ぎる下半分を撮影したんじゃないかと "Silent Echoes" という本に書いてありました。
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コメント
小道具係からエレノアと妹の話、
なんかいいなあ。
すごくいい時代から最近まで繋がったものを感じられて。
とにかくイイです!w
これから探偵学入門観るたびに、その話が浮かんできて嬉しくなるなあ。
投稿: 白い蓮 | 2011年7月28日 (木) 00時15分