キートンの短編映画 (16): 「北極無宿」
ずっと前にニフティから光回線への勧誘電話があって、こちらも乗り気になって30分だか1時間ぐらいだか、説明を聞いたり、自分の情報を伝えたりしました。「あとでNTTから連絡がある」というので電話を待っていたら、NTTからは私の地域では光回線がまだ使えないとのこと。じゃあ、その前の電話は何だったんよ!というわけで、光回線と聞いただけで私の怒りのスイッチが入るのです。1年前にもニフティから勧誘の電話があったので、そのときのことを話したら、すぐに「すみませんでした」と言って引きさがりました。昨日も夕方に勧誘の電話があり、「お時間のほう大丈夫だったでしょうか」というカチンとくる言葉づかいがあり、光回線の説明をしようとするので、「ADSLで満足していますから」と繰り返していたら、最後は少々お怒りになられたような感じでした。こっちにカチンとくる権利はあっても、勝手に電話をかけてきたそっちが怒る権利はない。年老いた母親から同じ話を何度も聞かされる貴重な時間に電話なんてかけてこずに、メールを使えばいいじゃないか。地上デジタルみたいに光回線しか使えなくなる日が来ないことを祈る。
さて、不愉快な気分が収まったところで、本日はキートンの短編15作目「北極無宿」(The Frozen North)。アメリカでの公開は1922年8月。監督・脚本は、いつものとおりキートンとエディ・クラインの共同。
これ珍品です。実は夢を見ていたという枠組みと、当時話題の映画のパロディだということでいくらか許せるにしても、少々残酷。たとえば、家に帰ると妻が男とイチャイチャしているので、キートンはピストルで二人を射殺する。ところが、実は隣の家に間違えて入って、そこの夫婦を射殺したのです。それをまったく気にせず、自分の家に帰るキートン。最後のほうでは、キートンが女性を乱暴しようする。女性が床に横たわって泣いているところに夫が帰ってきて、キートンともみ合いになる。そこへ通りかかったキートンの妻がキートンを撃つ。倒れたキートンは、力をふりしぼり、助かったことを抱き合って喜んでいる夫婦にピストルを向ける。そこで映画館の掃除人に叩き起こされる。
フラハティの「極北のナヌーク」、ウィリアム・S・ハートの西部劇、シュトロハイムの「愚かなる妻」などが混在しているようです。女性を乱暴しようとするのは「愚かなる妻」のパロディだというのはわかる。キートンが一瞬ドイツ将校のような格好に変身するから。間違って隣の家に入り、妻が男と浮気していると思い込むところで、キートンは涙を流すが、これはウィリアム・S・ハートが映画の中で必ず一度は泣くというのをパロディにしたもので、これを見たハートは気分を害して二年間キートンと口をきかなかったとか。
夢だから連想式に話が進行し、全体の脈絡がない。キートンが地下鉄の終着駅を降りると北国で、なぜか背中に洗濯物らしき靴下をぶら下げているところから変な感じ。ジョー・ロバーツが運転するソリをひっぱる10頭ほどの犬の中に子犬が何匹も混ざっていたり、だだっ広い雪原でなぜかお巡りさんが交通整理をしていたり、スピード違反を取り締まる警官がいたりする。氷上で釣りをするシーンは笑えました。近くで釣りをしていた人の糸とからまり、力強く引っ張ると、その人を釣り上げてしまうのです。
バージニア・フォックスとよく共演するようになったキートンですが、この作品にはフォックスは出ていなくて、たまにしか出なくなったシビル・シーリーが奥さん役で出演しています。やっぱり奥さんはシビル・シーリーなんですかね。最後彼女に射殺されてしまいますが、「マイホーム」や「船出」でひどい目にあった恨みでしょうか。1921年5月に結婚したナタリー・タルマッジとの結婚生活がうまくいってなかったのか、夢見ごこちの悪い作品です。
私のキートン採点表(5つ星満点)
- 「マイホーム」 ★★★★★
奇抜に作られた家が秀抜で、この中心がしっかりしているし、その前後も充実している。 - 「囚人13号」 ★★★★
とりとめもないが、ブラックなジョークがシュール。 - 「スケアクロウ」 ★★★
可愛いシーリーとの初々しい恋愛以外、普通に面白い。 - 「隣同志」 ★★★★
両脇にアパートがあって、真ん中に塀があるという中庭が良い。 - 「化物屋敷」 ★★
銀行の前半は接着剤のついた札束を使ったドタバタがくどいし、後半の化物屋敷のドタバタもありきたり。 - 「ハード・ラック」 ★★★
私が年取ったからなのか、枠組がしっかりしたものに安心するようで、とりとめもないものが苦手になってます。 - 「ハイ・サイン」 ★★★
キートンがアーバックルから独立して最初に作った短編。 キートンが気に入らなくてお蔵入りになっていたが、新作を撮影中に負傷したため、やむなく公開。 - 「強盗騒動」 ★★★★
ノンストップのチェイスもの。 - 「一人百役」 ★★
多重撮影で出演者がすべてキートンという着想は面白いが、中身が伴わない。 - 「船出」 ★★★★★
私にとってのキートンの最高傑作短編。家族四人がボート遊びに出かけて散々な目にあう。 - 「白人酋長」 ★★★★
お馬鹿な蝶々収集家が酋長に祭り上げられ、インディアン部族を利権争いから救い、部族の娘と結ばれる。 - 「警官騒動」 ★★★★★
大量の警官に追いかけられるアナーキーなキートン。 - 「華麗なる一族」 ★★
室内でのドタバタが中心。地味で貧乏臭い。 - 「鍛冶屋」 ★★★
個々のエピソードは面白いが、それらの結果がひとかたまりになってキートンに襲いかかってくるというダイナミックさがない。 - 「北極無宿」 ★★★
シュールな珍品。
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コメント
「光」は、まったく似た経験があります(笑)
こちらは相手を不快にさせまいと丁寧に断るつもりで
会話を続けているのに、向こうの方からふてくされる様に電話を切られたときのこちらの立場は?ですよね。
キートンならこの感覚をサイレントでどう表現
したでしょうかね(笑)
投稿: 白い蓮 | 2011年6月 2日 (木) 21時02分