第二次大戦中、マクラレンは戦争に関する作品を五本作りました。
V for Victory (1941)
Five for Four (1942)
Hen Hop (1942)
Dollar Dance (1943)
Keep Your Mouth Shut (1944)
"Dollar Dance" はインフレ防止策に関する作品で、"V for Victory" "Five for Four" "Hen Hop" は軍事公債を宣伝する作品です。平和主義者のマクラレンは直接戦争を扱った作品は作りたくなかったらしい。軍事公債も兵器を買うために購入するものだからマクラレンにとっては不本意だろうけど、兵器を購入するのに税金ほどには役立っていなかった、というような弁解をテレンス・ドブソンは "The Film Work of Norman McLaren" の中で書いています。最後の "Keep Your Mouth Shut" は、より直接的に戦争を描いており、他の作品のように直接フィルムに絵を書きこむアニメではなく、実写とアニメを混ぜた白黒作品です。もともと社会参加意識が強いので、戦争が進むにつれ、抽象的な作品ばかり作っていることに疑問を感じ始めたようです。
どの作品も3分あるかないかぐらいです。YouTubeでざっと調べましたが、残念ながら、どれもアップロードされていないようです。DVD7枚組はテーマごとに分類されており、"Hen Hop" を除く四作品は第四巻の "War and Peace" というテーマのもとに収められています。"Hen Hop" は第二巻の "The Art of Motion" と "Surrealism" という二つのテーマの各々に収めまれています(ある作品がいくつものテーマに関連している場合、すべての関連テーマに収録されているので、この7枚組には作品が重複して入っていることが多いようです)。
古いのから見ていくと、"V for Victory" は、勝利公債を買えという宣伝映画のようで、実際には "Buy Victory Bonds" という文字が出てきます。これまでのマクラレン作品と同じパターンで、太い線で大まかに描かれた人間がさまざまな形に変化しつつ横方向に歩いていくというのが前面で、背後は雲が素早く流れていきます。バックが威勢のよいマーチで、なんだか愉快。バックが青、人間が赤、雲が黒。
"Five for Four" は、4ドル払えば数年後には5ドルになるから軍事公債を買い給えという宣伝映画。音楽はブギウギピアノをバックにした何本かの管楽器。映像のバックは、小高い丘、雲、いくつかの田舎の建造物で、いろんな形に変化するドル札が前面で右方向に移動すると(というより、バックが左方向にバックすると)、郵便局があって、そこでお札が公債に変わる。すると、今度は逆方向に動き出し、2年後には利子が何セントになり、3年後には何セントになり、ということが前面に表示される。
"Hen Hop" は、戦争に関するテーマに収められていないように、これだけだと、公債の宣伝には見えない。ただ、一か所 "Save" (貯金しろ)という文字が出てくる。マクラレンおなじみの趣向で、大まかに描かれたニワトリがさまざまな形に変化する。音楽はギコギコ鳴るフィドルを中心にした非常に田舎っぽいカントリー。途中で歌手が少し歌うのだけど、何を歌っているのか私にはわからないのが残念。
"Dollar Dance" は、最初、バックが横方向ではなく、後方に雲が動いていくのが珍しい。でも途中から横方向になります。前面では"$"という文字がさまざまに変化します。男の声の歌とせりふで、インフレを説明しているらしく、結局、公債を買うことで貯金しろと伝えているようです。
以上はどれも似たような趣向で、愉快なものですが、"Keep Your Mouth Shut" は、頭蓋骨がしゃべるという不気味なもの。目の部分にハーゲンクロイツが出てくるので、ナチスを表しているのでしょう。その頭蓋骨が何か不吉な事をしゃべっている合間に、焼けている家や兵士の死体の実写映像が流れます。
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