4月21日に書いたように、18作品収録されていて25ドルほどの "Ultimate Film Noir Collection" という6枚組DVDを購入しました。お目当てはエドガー・ウルマーの "Detour" で、"100 Road Movies" という本を眺めていたら見たくなったのですが、全体がロードムービーなわけではなく、むしろ一緒に収録されていた "The Hitch-Hiker" の方がロードムービーっぽかったです。とはいえ、"Detour" も面白い作品で、特にアン・サビッジ Ann Savage という女優さんが良かったのですが、これはまたの機会に。"The Hitch-Hiker" は日本では劇場未公開のようですが、以下「ヒッチハイカー」とします。
監督:アイダ・ルピノ
プロデューサー:コリアー・ヤング(1948年から51年までルピノと、52年から61年までジョーン・フォンテインと結婚している)
副プロデューサー:クリスチャン・ナイビー(「遊星よりの物体X」の監督)
脚本:ダニエル・メインウェアリングの原案をロバート・ジョセフが脚色したものに基づきコリアー・ヤングとアイダ・ルピノが脚本を書く。
撮影:ニコラス・ムスラカ
音楽:リース・スティーブンズ
音楽監督:コンスタンチン・バカレイニコフ
主演:エドモンド・オブライエン、フランク・ラブジョイ、ウィリアム・タルマン
RKO配給。1953年4月29日公開。71分。白黒。
アイダ・ルピノは1972年の「ジュニア・ボナー」が日本公開されたときに知ったのですが、それはこの映画で好演したこともあるけど、映画出演が久し振りで、日本でしばらくお目見えしていなくて、当時愛読していた「スクリーン」誌のベテラン評論家たちが騒いだからかもしれません。IMDbによれば、60年代のアメリカではテレビシリーズによくゲスト出演したようです。彼女の作品といえば、ハンフリー・ボガートと逃避行を続けるラオール・ウォルシュ監督の「ハイ・シエラ」(1941)がまず頭に浮かぶのだけど、ロバート・アルドリッチ監督の「悪徳」(1955、The Big Knife)も印象的でした。ゲイリー・クーパー主演の「永遠に愛せよ」(1935, Peter Ibbetson)で美術館か何かの受付嬢が可愛かったので、誰だろうと調べたら、まだ20歳ぐらいのアイダ・ルピノでした。1950年頃から監督も始めて、ハリウッドの女流監督の先駆的存在だったようです。「ヒッチハイカー」は、"Film Noir: An Encyclopedic Rerefence to the American Style" には、女性が監督した唯一のフィルムノワールと書かれていますが、少なくともこの本に収録されている作品ではそうなのでしょう。話は単純で、ヒッチハイクするごとに運転手から金品を奪い射殺する殺人鬼が、釣りのためにメキシコにドライブしている男二人組の車に同乗して、二人を脅しながらメキシコに逃げようとするもの。低予算で作られていて小粒だけど、けっこう面白く作られていて、タンクローリーに追いかけられるだけのスピルバーグの「激突」あたりが思い浮かびます。映画館よりテレビ向きな感じがするし、実際、ルピノは、50年代前半に映画を数本監督したあとは、テレビのシリーズものの監督を50年代後半から60年代の終わりあたりまで続けたようです。この殺人鬼は片目をあけて眠る精神異常者で、この不気味な男の存在は、当時の核兵器や共産主義者に対する恐怖を表現しているというのが本 "Film Noir" の解説。夜の都会が舞台ではないけど、荒涼たる砂漠の中で主人公たちが逃げ道のない絶望的な状況に陥る点ではフィルムノワール的だというような解説もしています。
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